永住申請: 将来の永住申請に備えた望ましい転職の仕方 – 3

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 前回までのブログ(1回目2回目)では、転職の際の中断期間に関して3つのシナリオに分類し、望ましい順序に関して述べました。一番望ましいのは、前後する二つの雇用期間に一日たりとも中断期間を空けないシナリオです。

 しかし、どうしても中断期間が入ってしまう事を避けられない場合があります。そのような場合にどうすれば良いのかを、このブログで述べたいと思います。

健康保険に関する対応方法

中断期間中の健康保険の選択肢

 前回までのブログでは、中断期間中の健康保険は、全ての人に当てはまる第一層の国民健康保険であると単純化しました。しかし、人によっては他の選択肢を取ることも可能になります。下記で選択肢の全体を解説します。

健康保険 選択肢1 (HA1): 配偶者の第二層・健康保険の被扶養者となる

 この選択肢は、配偶者が会社に勤務していて配偶者自身の第二層・健康保険に加入しており、あなたが中断期間中、被扶養者として加入できる場合に選ぶことができます。被扶養者として加入するためには、収入(失業手当を含む)が健康保険組合が定めた一定の上限金額以下であることなどがが条件となります。

 追加の保険料を必要としないのがこの選択肢の魅力です。配偶者が給与から控除される形で支払う本人分の保険料が、被扶養者の健康保険もカバーしています。あなたがこの選択肢を取れるか否かに関しては、配偶者が勤務する会社の人事部に問い合わせてください。

 子どもなどの扶養家族も、被扶養者としてあなたの配偶者の第二層・健康保険に加入します。

健康保険 選択肢2(HA2): 退社した会社の第二層・健康保険を継続する

 もう一つの選択肢は、退社した会社の第二層・健康保険の加入を継続することです。加入を継続する・しないは任意なので、この選択肢は「任意継続」と呼ばれています。

 この選択肢を検討する際には、以下の点に留意してください。

  • 任意継続を選ぶことができるのは、以下の要件を満たしている場合です:
    • 退社した会社の健康保険に2ヶ月以上、被保険者として加入して保険料を支払っていること、かつ、
    • 退社した日から20日以内に任意継続を申し込むこと

 上述の選択肢1と異なり、保険料の支払いが必要となります。しかも、保険料は退社前の2倍の金額になります。退社前は保険料の50%を会社が補助として支払っていましたが、退社後はこの社員向けの補助がなくなりますので、保険料の100%全額、すなわち退社前の2倍の保険料となります。

 ただし、退社前と同様に、被扶養者が追加保険料なしで被保険者となる仕組みには変わりがありません。また、この任意継続による加入は最長2年間、続けることができます。さらに、一旦、任意継続を始めると退社後の中断期間中は他の選択肢1や3に変更できなくなりますので、申し込み前に慎重に検討する必要があります。中断期間を終え、次の会社に入社した時に任意継続が終了することになります。

 子どもなどの扶養家族も、被扶養者として退社した会社の第二層・健康保険に加入します。

健康保険 選択肢3(HA3) : 第一層の国民健康保険に加入する

 上記の選択肢1または2が取れない場合、この選択肢3を選ぶことになります。

 この選択肢は全ての人にに当てはまる、第一層の国民健康保険です。この選択肢での留意点は、扶養家族分の保険料支払いが必要となる点です。第二層の健康保険では追加保険料なしに扶養家族も健康保険に加入できますが、第一層の国民健康保険では本人分とは別に扶養家族分の保険料が必要となります。

 子どもなどの扶養家族も国民健康保険に加入します。

年金に関する対応方法

 上述の健康保険と異なり、中断期間中の年金加入の選択肢は国民年金のみとなります。前回までのブログにて述べました通り、年金の加入と保険料の支払いは月単位となり、月の末日の加入状況でその月の年金加入先が決まります。従いまして、中断期間が月末を越えない場合には国民年金に加入する必要はありません。

中断期間中の年金の選択肢

 中断期間が月末を超える場合の国民年金の加入方法には、下記の2通りが考えられます。

国民年金 選択肢1(PA1):配偶者の第二層・厚生年金の被扶養者となる(国民年金第3号被保険者)

 この選択肢は、配偶者が会社に勤務していて配偶者自身の第二層・厚生年金に加入しており、あなたが中断期間中、被扶養者として加入できる場合に選ぶことができます。被扶養者として加入するためには、収入(失業手当を含む)が日本年金機構が定めた一定の上限金額以下であることなどがが条件となります。

 追加の保険料を必要としないのがこの選択肢の魅力です。配偶者が給与から控除される形で支払う本人分の年金保険料が、被扶養者の国民年金もカバーしています。あなたがこの選択肢を取れるか否かに関しては、配偶者が勤務する会社の人事部に問い合わせてください。

国民年金 選択肢2(PA2):第一層・国民年金の被保険者となる(国民年金第1号被保険者)

 上記の国民年金・選択肢1を取ることが出来ない時は、通常の被保険者(国民年金第1号被保険者)として国民年金に加入します。

 中断期間中は、あなたの被扶養配偶者の年金は国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者へと変更されます。この変更により、被扶養配偶者であっても国民年金保険料を納付することになります。第3号被保険者は国民年金保険料の納付が免除されていますが、第1号被保険者に変更されますのでその納付免除がなくなり、被扶養者が自ら納付する義務が生ずることになります。

 この被扶養配偶者の第3号から第1号への変更と納付義務が生まれる点は見落とされがちです。納付を忘れて未納や遅延納付となると、永住申請の際に不許可の事由となります。将来、永住申請を検討されている方は、あなた自身のみならず、被扶養配偶者の年金保険料の納付に留意してください。

留意事項

社会保険料控除を申告して、所得税を節約する

 中断期間中に自ら支払った本人分と扶養家族分の健康保険や年金の保険料は、課税所得から控除することができます。これは社会保険料控除と呼ばれます。この社会保険料控除により所得税や住民税を下げ節約することができますので、支払った保険料の領収書は無くさないように保管してください。領収書が年末調整や確定申告で必要となります。

 社会保険料控除の詳細は別のブログ記事に書きましたので、ご興味がある方はそちらをご覧ください。この記事は被扶養配偶者の社会保険料に焦点を当てていますが、同じ控除の仕組みが本人分の社会保険料にも当てはまります。

納期限前に納付する

 健康保険や年金を自ら支払う場合には、納付期限前に納付しなければなりません。永住申請の審査では、申請前の2年間、健康保険と年金の保険料支払いが全て納期限前になされていること証明する文書の提出が求められ、それを入管庁が確認します。1回でも未納や遅延納付があると、永住申請は不許可となる可能性が高くなります。

 健康保険と年金の納期限は一般的には、以下となります。

  • 健康保険: 支払月の末日
  • 年金: 支払月の翌月の末日

 毎月コンビニ等で支払う月払い以外に、銀行口座からの自動引き落としや、年金保険料の前納の制度があります。それらの利用も積極的に検討して、未納や遅延納付を起こさないように気をつけてください。

保険料の領収書は全て保管する

 健康保険や年金を自ら支払う場合には、支払った保険料の領収書(又は、銀行口座の保険料引き落としの明細)は全て保管しておく必要かあります。納付期限前の納付を証明するために、永住申請の審査では、申請前の2年間の健康保険と年金の保険料支払いの領収書の写しの提出が求められます。この記事を書いている2022年時点で、領収書や口座引き落とし明細以外の方法で「保険料の期限前納付を証明してくれる」一般的な公的文書がないため、領収書又は口座引き落とし明細の写しの提出が必要となります。

まとめ: 中断期間中の健康保険と年金

 このブログ記事の内容を図示し、下のスライド資料にまとめましたので、ご覧下さい。

Best-Scenario-for-PR-application-when-Changing-Job-3-JP

お問い合せ先

 詳細は、以下の組織の担当者にお問い合わせください。

  • 健康保険
    • 選択肢1(HA1):配偶者の会社の人事部
    • 選択肢2(HA2):あなたの前の会社の人事部
    • 選択肢3(HA3):住所地の地方自治体 (市役所、区役所等)
  • 年金
    • 選択肢1(PA1):配偶者の会社の人事部
    • 選択肢1(PA2):住所地を管轄する年金事務所

以上