このページでは雇用調整助成金の概要をまとめます。詳細や最新の情報は文末の厚労省のリンク先の文書を参照して下さい。
雇用調整助成金とは
雇用調整助成金とは、雇用保険が適用されている事業主が、一定の要件を満たし、ハローワーク(公共職業安定所)に計画書を届け出て、雇用調整(休業・教育訓練・出向)を実施した場合に、労働者に支払った休業手当の一部が支給される助成金です。
この雇用調整助成金の申請要件、助成金の支給条件と手続きの流れの概要を以下にまとまます。また、2020年に世界中で発生しました新型コロナウイルス感染症に対する特例措置も併せて書き出します。
助成金の申請に当たって社労士のサポートが必要な方は、当事務所にご相談ください。記事の後にサポート費用と問い合わせ先が書かれています。
中小企業・大企業の定義
いくつかの申請要件や支給条件は企業規模により、取り扱いが異なっています。この中小企業・大企業の分類の詳細に関しては、このページをごらん下さい。
申請要件
以下の要件を満たしている事業者は、雇用調整助成金の申請ができます。
- 雇用保険に1年以上加入している(保険加入要件)
- 要件を充足する雇用調整を実施した
- 景気の変動、産業構造の変化、その他の経済的理由により (事由要件)
- 前年比・3カ月平均で10%以上の売上高または生産量の低下があり (生産量要件)
- 前年比・3カ月平均で被保険者数と派遣労働者の数が以下の限度以上に増えておらず(雇用量要件)
- 中小企業:10%を超えてかつ4人以上
- 大企業:5%を超えてかつ6人以上
- 労使間の協定に基づいて(労使協定要件)
- 労働基準法が規定する、平均賃金の60%以上の休業手当の支払を満たしている必要があります。
- 以下の規模以上の雇用調整を行った(休業等規模要件)
- 中小企業:所定労働延べ日数の1/20
- 大企業:所定労働延べ日数の1/15
- 前回の申請終了から1年間以上、助成金を申請していない期間が経過している(クーリング期間要件)
- 必要な手続きを履行できる
- 必要書類(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、など)を提出できる (確認資料要件)
- 労働局の実地調査の受入れに合意できる (調査受入要件)
- 以下の各項目のいずれにも該当していない(不支給要件)
- 過去に不正支給があり、それ以降、規定の年数が経過していない等
- 過去に労働保険料の滞納がある
- 過去1年間の間に労働関係法令違反で送検処分を受けている
- 風俗営業関係事業主である
- 暴力団・暴力団員(である、を利用している、に関与・関係している)
- 事業主または役員が破防法4条の団体に属している
- 倒産している
- 不正支給の際の事業名公表を承諾しない
助成金の支給条件
助成金の支給条件をまとめると以下となります。
- 対象労働者:雇用されている雇用保険の被保険者、但し以下の者を除く:
- 被保険者としての連続雇用期間が6カ月未満の者
- 解雇・退職が予定されている者
- 日雇い労働被保険者
- 特定就職困難者雇用開発助成金等の支給対象となる方
- 助成率:休業手当等に対する助成金支給率
- 中小企業:2/3
- 大企業:1/2
- 教育訓練加算:休業時に要件を満たす教育訓練を実施した場合の加算額
- 1,200円/人日
- 支給制限:
- 一人日当たりの助成金単価の上限金額:8,330円/人日
- 限度日数:1年間で100日まで、3年間で150日まで
- 残業相殺:所定外労働の延人日分が休業延人日から相殺される(差し引かれる)
手続きの流れ
手続きの流れは以下の順序ようになります。
- 事業(売上・生産)の低下・縮小
- 雇用調整(休業・教育・出向)の計画
- 労使間の協定
- 計画届→雇用調整実施→支給申請 の繰り返し(1~3ヶ月毎)
- 計画届をハローワーク・労働局に提出
- 雇用調整(休業・教育・出向)の実施
- 支給申請をハローワーク・労働局に提出(実施後、2ヶ月以内)
- 労働局における審査・支給(不支給)の決定
- 支給額の振込
新型コロナウイルス感染症のための特例措置(2020年4月1日~6月30日)
2020年3月に始まった新型コロナ感染症予防のための外出や休業の自粛要請のため、多くの企業で顕著な事業規模の縮小・低下が起きています。それに対応するため、2020年4月1日から6月30日までの期間を「緊急対応期間」として、雇用調整助成金の要件・支給条件の緩和・簡素化が図られました(本ページでは「コロナ特例」と呼びます)。(注:今後の感染状況によって対応期間の延長や特例措置の内容の変更などがあり得ますので、最新の情報は下記の厚労省の参考サイトで確認してください)。
コロナ特例:申請要件
コロナ特例での申請要件を、削除部分を取り消し線で、また、追加部分はオレンジ色で、強調すると以下のようになります。
- 雇用保険に
1年以上加入している(保険加入要件)- 2019年11月末までに加入している場合も申請可能
- 要件を充足する雇用調整を実施した
- 景気の変動、産業構造の変化、その他の経済的理由により (事由要件)
- 「新型コロナウイルス感染症の影響による需要の減少等」の事由でも申請が可能
- 前年比・
3カ月平均で10%以上の売上高または生産量の低下があり (生産量要件)- 前年比(注1)・1カ月平均で5%以上(注3)の売上高または生産量の低下があり
- (注1) 前年同期を比較対象とすることが適当でない場合は、前々年同期1か月(注2)との比較が可能
- 前年同期や前々年同期1か月と比較出来ない又は比較しても指標が5%以上減少せず、要件を満たさない場合は、計画届を提出する月の前年同月から計画届を提出する月の前々月までの間の適当な1か月(注2)との比較が可能
- (注2)比較に用いる1か月はその期間を通して雇用保険適用事業所であり、かつ当該1か月の期間を通して雇用保険被保険者を雇用している月である必要があります
- (注3)休業期間(対象期間)の初日によってはこの閾値が変わります。
- 5%:休業期間の初日が令和2年4月1日から6月30日(緊急対応期間内)の場合
- 10%:休業期間の初日が緊急対応期間外の場合
- (注1) 前年同期を比較対象とすることが適当でない場合は、前々年同期1か月(注2)との比較が可能
- 前年比(注1)・1カ月平均で5%以上(注3)の売上高または生産量の低下があり
前年比・3カ月平均で被保険者数と派遣労働者の数が以下の限度以上に増えておらず(雇用量要件は問われない)- 労使間の協定に基づいて(労使協定要件)
- 労働基準法が規定する、平均賃金の60%以上の休業手当の支払を満たしている必要があります。
- 以下の規模以上の雇用調整を行った(休業等規模要件)
- 中小企業:所定労働延べ日数の
1/201/40 - 大企業:所定労働延べ日数の
1/151/30
- 中小企業:所定労働延べ日数の
- 景気の変動、産業構造の変化、その他の経済的理由により (事由要件)
前回の申請終了から1年間以上、助成金を申請していない期間が経過している(クーリング期間要件)- (クーリング期間を撤廃。1年以上間隔があいていなくても申請可。)
- 必要な手続きを履行できる
- 必要書類(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、など)を提出できる (確認資料要件)
- 確認資料要件が簡略化(以下、代表例):
- 出勤簿:「手書きシフト表」でも可
- 賃金台帳:「給与明細の写し」でも可
- 資本金の確認:「履歴事項全部証明書」等を廃止
- 労使協定書:労働者個人ごとの「委任状」を廃止
- 賃金総額の確認:「確定保険料申告書」を廃止(システムで確認)
- 確認資料要件が簡略化(以下、代表例):
- 労働局の実地調査の受入れに合意できる (調査受入要件)
- 必要書類(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、など)を提出できる (確認資料要件)
- 以下の各項目のいずれにも該当していない(不支給要件)
- 過去に不正支給があり、それ以降、規定の年数が経過していない等
- 過去に労働保険料の滞納がある
- 過去1年間の間に労働関係法令違反で送検処分を受けている
風俗営業関係事業主である(風俗営業等関係事業主への支給も可)- 暴力団・暴力団員(である、を利用している、に関与・関係している)
- 事業主または役員が破防法4条の団体に属している
- 倒産している
- 不正支給の際の事業名公表を承諾しない
コロナ特例:支給条件
コロナ特例での支給条件を、削除部分を取り消し線で、また、追加部分はオレンジ色で、強調すると以下のようになります。
- 対象労働者:
- 雇用されている雇用保険の被保険者、但し以下の者を除く:
被保険者としての連続雇用期間が6カ月未満の者(6カ月未満の被保険者も対象として良い)- 解雇・退職が予定されている者
- 日雇い労働被保険者
特定就職困難者雇用開発助成金等の支給対象となる方- 特定就職困難者雇用開発助成金等の支給対象となる方は併給調整が行われる
- 被保険者でない労働者(週20時間未満のパート・アルバイト等)も休業分のみ助成金の対象として良い
- 雇用されている雇用保険の被保険者、但し以下の者を除く:
- 助成率:
- 休業手当等に対する助成金支給率
- 中小企業:
2/34/5 - 大企業:
1/22/3
- 中小企業:
- 解雇等をしなかった場合の上乗せ助成率
- 大企業:3/4
- 中小企業:9/10
- 注)ここに該当する中小企業には更に「協力要請期間特例」が令和2年5月1日に追加されました。下記参照ください。
- 協力要請期間特例:緊急対応期間中の休業等で、解雇をしなかった場合の上乗せ助成率が適用される中小企業が以下の要件を満たすと、助成率が10/10(100%)にさらに上乗せされます。
- 都道府県知事の休業等要請に協力して休業等をした場合
- 要件: 以下のいずれかを満たしている時は、
- 100%の休業手当を支払っている、または、
- 60%以上の休業手当を支払っていて、その金額が上限額(8,330円)以上である
- 効果: 休業手当全体の助成率が100%
- 適用期間:知事により休業等が要請された期間の休業等に適用
- 要件: 以下のいずれかを満たしている時は、
- 60%を超える休業手当を支払っている場合
- 効果: 休業手当で支払率が60%を超える部分の助成率が100%
- 適用期間:令和2年4月8日から6月30日までの休業等に適用
- 都道府県知事の休業等要請に協力して休業等をした場合
- 休業手当等に対する助成金支給率
- 教育訓練加算:休業時に要件を満たす教育訓練を実施した場合の加算額
1,200円/人日:以下の金額に引き上げ- 中小企業:2,400円/人日
- 大企業:1,800円/人日
- 自宅でインターネット等を用いた教育訓練方法も認められる
- 支給制限:
- 一人日当たりの助成金単価の上限金額:8,330円/人日
- 限度日数:1年間で100日まで、3年間で150日まで
- 緊急対応期間(2020年4月1日~6月30日)分は限度日数に合算せず、別枠で利用できる
残業相殺:所定外労働の延人日分が休業延人日から相殺される(差し引かれる)- (残業相殺は当面停止。残業時間の記載も不要。)
コロナ特例:手続きの流れ
コロナ特例での手続きの流れを、追加部分をオレンジ色で強調すると以下のようになります。
- 事業(売上・生産)の低下・縮小
- 雇用調整(休業・教育・出向)の計画
- 労使間の協定
- 計画届→雇用調整実施→支給申請(計画届の実施後提出も可:雇用調整実施→計画届→支給申請)の繰り返し(1~3ヶ月毎)
- 計画届をハローワーク・労働局に提出
- 雇用調整(休業・教育・出向)の実施
- 支給申請をハローワーク・労働局に提出(実施後、2ヶ月以内)
- 労働局における審査・支給(不支給)の決定
- 支給額の振込
助成金の申請サポートの費用
当事務所では以下の費用で助成金の申請サポートを行っております。金額は税抜き表記です。別途、消費税10%がかかります。
- 初回相談料:30分(無料)
- 着手金: 5万円(助成金が支給された場合には、報酬から差し引きます)
- 報酬: 助成金額の10% から着手金を減じた金額
- 但し、その金額が5万円未満の場合は報酬は5万円、つまり、着手金と報酬を合わせて10万円、とさせていただきます。
- その他:
- 申請要件を満たしていない場合は(例:就業規則未作成、など)、申請要件充足のためのサポート費用を別途、お見積もりいたします。
- 必要経費:交通費、公的機関に支払う手数料、郵送料などは実費で請求させていただきます。
お問い合わせ
ご質問や詳細の情報がご必要な場合は、以下の方法でお問い合わせください。
お電話:03-5656-1956
メールでのお問い合わせ
参考サイト
- 厚労省 雇用調整助成金
- 厚労省 雇用調整助成金・リーフレット(通常)(PDF)
- 厚労省 雇用調整助成金・リーフレット(コロナ特例)(PDF)