外国人材は最初の入国時に本人情報や日本での活動内容を審査され在留許可を受けます。その後も、在留期限を更新する際に同様な審査を受けます。しかし在留期間の途中で引越しや転職などにより審査を受けた時と状況が変わってくることがあります。これらの変更には届出が義務付けられているものがあり、届出を怠ると罰せられたり、将来の在留審査で不利益を被るものがあります。
このページでは、中長期に日本に在留する外国人材(中長期在留者)が行わなければならない変更に関する届出義務、並びに、中長期在留者を雇用または受け入れている会社や組織(所属機関)がその中長期在留者に関して届け出る義務についてまとめます。
入管法上の義務の全体像と届出対象者
本題の変更届出義務に入る前に、入管法上の義務の全体をおさらいしたいと思います。
入管法上の義務の全体像
入管法上の義務の代表的なものには以下があります。詳しくは 出入国在留管理庁・各種手続 のページを参照ください。
- 在留資格の適正な管理(認定・変更・更新・再入国許可・資格外活動許可など)
- 在留カードの管理(携帯・提示・更新(永住者・高度専門職2号対象)など)
- 各種変更の届出(住居地・所属機関・配偶者・その他在留カード記載項目)
これらの義務の内、1番と2番は忘れずに履行している外国人材がほとんどですが、忘れがちなのは3番の変更の届出です。このページの後半では特に3番の届出手続きに焦点を当てて概要を書き出しましたので、参考にしてください。
届出対象者: 中長期在留者の範囲
このページで届出が義務付けられている中長期在留者とは、以下のどれにも当てはまらない在留外国人の方を指します。
- 「3月」以下の在留期間が決定された人
- 「短期滞在」の在留資格が決定された人
- 「外交」又は「公用」の在留資格が決定された人
- 1から3の外国人に準じるものとして法務省令で定める人 (注1)
- 特別永住者
- 在留資格を有しない人
(注1) 「特定活動」の在留資格が決定された,台湾日本関係協会の本邦の事務所(台北駐日経済文化代表処等)若しくは駐日パレスチナ総代表部の職員又はその家族の方
この中長期在留者の定義から除外されている外国人材には、このページでは解説している届出義務が課せられていません。
3: 中長期在留者に係る届出義務
まず、中長期在留者の届出は、届け出る主体の違いにより以下の2つに分類されます。
- 中長期在留者本人による届出
- 所属機関(中長期在留者が所属する会社、学校や組織)による届出
この届出主体に着目した大分類は、更に以下のように分類されます。
これらの公的義務の未履行に対して罰則が規定されていますが、実際の未履行に対して必ず罰則が課される運用にはなっていないように思われます。しかし、罰則が課されない場合でも、これらの公的義務の未履行は更新審査や永住審査の際にマイナス評価を受けることになります。未履行の方は早急に履行して、審査上のマイナス評価をリカバリーしてゆくおくことが必要になります。
中長期在留者本人による届出
中長期在留者本人が届出義務のある変更には、以下があります。
- 住居地の変更
- 所属機関の変更
- 配偶者との離婚または死別
- 在留カード記載事項の変更
これらの届出を提出先で分類すると、以下のようになります。
変更があったもの | 届出の提出先 |
住居地 | 住居地の市区町役所 |
所属機関 | 地方出入国在留管理局 |
配偶者(離婚・死別) | |
在留カード記載事項 |
住居地の変更の届出
住所地を変更した際には、転出届・転入届の提出が義務付けられています。概要をまとめると、以下のようになります。
届出 | 提出先 | 提出期限 |
転出届 | 引っ越し前(転出元)の地方自治体 | 住居変更の14日前から、変更後の14日以内に |
転出元 | 引っ越し後(転入先)の地方自治体 | 住居変更後の14日以内に |
転出届・転入届の提出方法にはマイナンバーカードを使わない場合・使う場合で更に、下記の2つのタイプ(通常・特例)があります。以下に概要をまとめます。詳細は住居地の地方自治体にお問合せください。
- 通常: マイナンバーカードを使わない場合
- 転出届:を転出元の地方自治体で提出(窓口・郵送)
- 転出証明書:を発行してもらう
- 転入届:を転出先の地方自治体に提出
- 転出証明書:転出元で発行してもらった転出証明書を渡す
- 転出届:を転出元の地方自治体で提出(窓口・郵送)
- 特例: マイナンバーカードを使う場合
- (特例)転出届:を転出元地方自治体に郵送
- (自治体によっては郵送以外に、オンライン電子申請が可能)
- (注:転出証明書は不要となり、発行されない)
- 転入届:転入先の地方自治体に提出
- (その際にマイナンバーカードを持参する)
- (特例)転出届:を転出元地方自治体に郵送
これらの転入届や転出届は住民基本台帳法に基づく届出手続きです。入管法にも住居地の届出が別途規定されていますが、平成21年の法改正で外国人・中長期在留者も住民基本台帳の対象になって以来、日本人と同じ転入届・転出届を地方自治体に提出することにより、入管法上の届出は履行されたとみなされることとなり、別途届け出る必要はありません。
所属機関・配偶者・在留カード記載事項の変更の届出
これらに変更があった場合、変更後14日以内に、住所地を管轄する地方出入国在留管理局またはその出張所に変更を届出なければなりません。
この届出には、3つの届出方法が用意されています: 1) 入管庁の窓口で提出、2) 郵送で提出、3) オンラインで提出。届出方法の詳細は下記にリンク先のサイトをご覧ください。
所属機関による届出
また、外国人材を雇用する又は受け入れている所属機関にも、報告義務があります。外国人材を雇用しているのか、それとも雇用契約は結ばずに外国人材を受け入れているのか、によって届出の方法が異なります。
所属機関の類型 | 届出の方法 |
外国人材を雇用している | 労働施策総合推進法に基づいた届出 |
外国人材を受け入れている | 入管法に基づいた届出 |
雇用の場合:労働施策総合推進法に基づいた届出
外国人材を雇用している会社(所属機関)は、雇入れや離職の際に届出をすることが義務付けられています。外国人材が雇用保険の被保険者であるか否かによって、届出手続きが変わります。
雇用保険被保険者の場合
雇入れ・離職 | 手続き | 提出期限 |
雇入れ | 雇用保険 被保険者資格取得届 | 翌月10日まで |
離職 | 雇用保険 被保険者資格喪失届 | 翌日から10日以内 |
雇用保険被保険者でない場合
雇入れ・離職 | 手続き | 提出期限 |
雇入れ | 雇入れに係る 外国人雇用状況届出書 | 翌月末日まで |
離職 | 離職に係る 外国人雇用状況届出書 |
これらの届出手続きはオンラインで行うことも可能です。詳しくは下記のサイトをご覧ください。
- 厚労省 電子申請(申請・届出等の手続案内)
- ハローワーク 雇用保険の各種届出について
受入の場合:入管法に基づいた届出
外国人材を雇用以外の契約形態で受け入れている会社、学校または組織などは(所属機関)は、受け入れの開始や終了の際に届出をすることが努力義務とされています。外国人材が「留学」在留資格に場合は、開始や終了の届出に加えて、年2回の定期報告が努力義務とされています。「努力義務」ではありありますが、入管庁のホームページには、「届出を行わなかったとしても,刑罰を科せられることはありませんが,所属している外国人の方々の在留期間更新等の許可申請時に事実関係の確認を行うなど審査を慎重に行うことがあります」とありますので、スムーズな審査を受けるためにも届出の履行をされることをお勧めいたします。
在留資格 | 受け入れ | 手続き | 期限 |
共通 | 開始・終了 | 中長期在留者の受入れに関する届出 | 開始又は終了した日から14日以内 |
留学のみ | 定期報告 | 留学の在留資格を有する中長期在留者の受入れ状況に関する届出 | 毎年5月1日及び11月1日から14日以内 |
この届出には、3つの届出方法が用意されています: 1) 入管庁の窓口で提出、2) 郵送で提出、3) オンラインで提出。届出方法の詳細は下記にリンク先のサイトをご覧ください。
- 入管庁 所属機関による届出
- 本サイト 入管庁・電子(オンライン)届出の概要
以上